大阪地方裁判所 昭和35年(ワ)991号 判決 1960年12月14日
原告 国
訴訟代理人 山田二郎 外二名
被告 大和染料株式会社
主文
訴外新大和染料株式会社が昭和三二年七月二〇日別紙第一目録記載の物件について、被告に対してなした譲渡を金一、四五四、九六〇円の限度において取消す。
被告は原告に対し、金一、四五四、九六〇円を支払うべし。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
原告指定代理人は主文と同旨の判決を求め、その請求の原因として、
一、訴外新大和染料株式会社(以下訴外会社という)は、その昭和三二年度分法人税について、所轄税務署長により本税額二、二九八、五三〇円、利子税額二九二、二三〇円合計二、五九〇、七六〇円とする更正処分をうけたが、大阪国税局長により更正処分一部取消の審査決定があり、結局昭和三二年七月二〇日現在において同年度分の法人税として本税額一、二九〇、八九〇円、利子税額一六四、〇七〇円合計一、四五四、九六〇円(納期同年六月三日)の国税を滞納していたところ、その滞納処分による差押を免れるため故意に同日別紙第二目録記載のとおり会社の総資産を被告に譲渡した。右財産譲渡行為時において、訴外会社の代表取締役小椋憲之助、同内海正明は被告の代表取締役をも兼ねていたから、受益者たる被告も訴外会社と同様に詐害の意思があつたことは明白である。
二、よつて、原告は(旧)国税徴収法(明治三〇年三月二九日法律第二一号)第一五条に基いて、被告との間において、前記譲渡物件のうち別紙第一目録記載の物件の譲渡につき、その価額中滞納税額一、四五四、九六〇円の限度でその取消を求めるとともに同物件がその後被告において処分され、その返還が不能であるため、被告に対し、同物件の返還にかえて、譲渡の取消限度額相当の一、四五四、九六〇円の損害金の支払を求める。
と述べ、被告の主張に対し、
(一) 被告は、(旧)国税徴収法第一五条の規定は現行国税徴収法の施行にともない当然に廃止失効となつたものであつて、その効力を存続せしめる経過規定が存しないから、同法第一五条に基く原告の請求は失当であると主張するが、本件詐害行為は現行国税徴収法が施行される以前、すなわち(旧)国税徴収法が施行されていた間の行為であるが、かように(旧)国税徴収法が施行されていた間に詐害行為があれば、同法第一五条に基き債権者である国は詐害行為を取消す権能を取得するのであつて、右既得の詐害行為取消権能について現行国税徴収法は経過規定をおいていないが、経過規定をおいていないことは当然に同法が右既得権能について影響を与えない趣旨である。右既得の詐害行為取消権能は(旧)国税徴収法の全部改正にかかわらず、何らの影響もうけないもので、従来どおり(旧)国税徴収法第一五条に従つて権能の行使をすることができるものというべきである。
(二) 被告は、訴外会社において財産譲渡行為当時更正処分について審査請求をしていたから、租税債権は未決定であつたと主張するが、法人税に関する租税債権は当該事業年度の終了によつて発生し、更正処分により具体的に確定されるものであるから、更正処分による租税債権の数額がこれに対する再調査乃至審査請求によつて未決定の状態に帰せしめられるものでない。本件更正処分は、その後審査決定において数額の一部について取消されているが、取消債権者である原告の債権が右譲渡行為時において存在していたことは明白である。
(三) 訴外会社の設立の経過、訴外会社がその財産を被告に譲渡したことに関する被告の主張はこれを認める。被告は、滞納処分を免れるため故意に財産譲渡をしたのではないと主張するが、訴外会社は更正処分の通知をうけ、租税債務を負担し
ていることを知りながら、その財産を被告に譲渡し、営業をやめたのであるから、訴外会社において右財産譲渡行為時にその財産譲渡行為によつて租税債権の滞納処分を免れる結果となることを認識していたこと、すなわち(旧)国税徴収法第一五条にいう滞納処分を免れるための故意をもつて財産譲渡行為をしたことは明らかである。
と述べた。
被告訴訟代理人は「原告の請求は棄却する訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、
訴外会社が昭和三二年度分法人税について原告の主張する更正処分、更正処分一部取消の審査決定をうけたこと、訴外会社が原告主張の日別紙第二目録記載の会社資産を被告に譲渡したこと、右譲渡行為時において訴外会社の代表取締役小椋憲之助、同内海、正明が被告の代表取締役を兼ねていて、訴外会社及び被告が更正処分の内容を知つていたこと、被告において別紙第一目録記載の物件を売却処分して現在占有していないことは認めるが、その余の原告主張事実は争う。
(一) 原告の本訴請求は、訴外会社が被告に対してなした財産譲渡行為が(旧)国税徴収法第一五条にいわゆる詐害行為に該当するとして、同条に基き請求するものであるところ、現行国税徴収法(昭和三四年四月二〇日法律第一四七号)の制定に当り(旧)国税徴収法の廃止については明文は設けられていないようであるが、現行国税徴収法は(旧)国税徴収法の全部改正、すなわち新法制定であり、新法は旧法を改廃するものであるから、(旧)国税徴収法第一五条の規定も新法の施行にともない当然に廃止失効となつたものである。ところで、法令の改廃に当り旧法時代の事項につき旧法廃止後もその一部規定の効力を持続させようとするときは、必ず当該改正法令の附則においてか、もしくは同時に施行される単独法を制定して明文を以て規定せねばならない。しかるに現行国税徴収法が施行せられるに当り、(旧)国税徴収法第一五条の規定の効力を存続せしめるについて何らの経過規定も経過法も制定されていないのである。法は現に効力を有するものに限り適用されるものであつて、適用さるべき法律の規定が現に効かを有するか否かは判決言渡時において決せられるべきである。(旧)国税徴収法第一五条の規定は民法第四二四条と同じく講学上いわゆる廃罷訴権を定めたものと解すべきであるから、同書に基く詐害行為の取消は判決によつて形成されるべきところ、本件にあつては、(旧)国税徴収法第一五条は既に完全に廃止されているのであつて、その効力を存続せしめる経過規定も経過法も存しないのであるから、形成判決を求める原告の請求は失当である。
(二) 原告は、訴外会社の昭和三二年七月二〇日現在における滞納税額は合計一、四五四、九五〇円であると主張するが、同日当時は訴外会社において本税額を二、二九八、五三〇円とする更正処分に対し再調査請求について審査請求中であつたから、滞納税額は未決定であつたというべきである。
(三) 原告は、訴外会社が別紙第二目録記載の会社資産を被告に譲渡したのは滞納処分を免れるため故意になしたものであると主張する。しかし、訴外会社が被告に対して右財産譲渡行為をなしたのは次の事情によるものであつて、滞納処分を免れる目的意思は毛頭なかつたのである。すなわち、
被告は昭和二五年二月三日設立登記を経た株式会社であるところ、昭和二九年当時多額の負債を生じ、当時の被告に対する債権者等の協議により、
(1) 被告の債務償還の方途として新会社を設立し、被告の事業は全部新会社が継承して経営する。
(2) 被告はその所有する工場、土地建物、機械、器具、その他工場の用に供するもの、什器備品等一切を有姿のまま満三年間新会社に賃貸し、新会社がこれを使用収益する。
(3) 被告の所有する原料、資材、仕掛品、製品、売掛金、預金、現金等の流動資産はすべて新会社に帳簿価格をもつて譲渡する。
(4) 新会社は被告の債務完済の目的をもつて被告の物件を賃借するものであるから、新会社の利益は一切被告の債務の返済金に充当する。
(5) 新会社が被告の事業を承継経営し三年間に被告の債務を完済し、新会社設立の目的を達したときは、新会社は被告にその事業全部を返還するため、被告より賃借した物件を被告に返還するとともに、新会社の保有する原料、資材等の資産をすべて被告に譲渡し、工員を引継ぐ。
等の話合がまとまり、右話合により新会社として新大和染料株式会社(訴外会社)が設立されたので、昭和二九年九月二二日被告と訴外会社とは、被告の債権者委員代表の同意をえて、右話合の趣旨に基いて契約をなし、被告及び訴外会社は右契約条項どおり履行し、被告はその事業を中止する一方、訴外会社は、被告の事業を継承して経営し、その営業利益をもつて被告の債務を弁済した。
かくて右契約の時から約三年を経た昭和三二年七月被告の旧債はほぼ完済せられ、訴外会社設立の目的は概ね達成されたので、当初の話合の趣旨に基き新会社はその事業の全部を被告に返還することとし、被告の債権者委員代表の同意のもとに昭和三二年七月二〇日被告と訴外会社との間で契約をなし、右契約により訴外会社は被告に対し、
(1) 被告より賃借使用中の土地、建物その他の物件を右契約の」日を以て被告に返済し、
(2) 訴外会社の所有する原料、資材、仕掛品、製品及び予金、現金、受取手形等を被告に譲渡して、
その事業を休止し、昭和三二年一〇月一九日解散し、被告は訴外会社より前記土地、建物等の返還と原料その他の訴外会社所有物件の譲渡をうけで事業を再開したのである。
従つて、訴外会社が被告に対し原告主張の会社資産を譲渡したのは、被告訴外会社との昭和二九年九月二二日の契約の趣旨に基くものであつて、右財産譲渡について、被告はもとより訴外会社も国税の滞納処分を免れる目的意思は毛頭なかつたのである。
(四) 原告は、訴外会社は財産譲渡行為時にその譲渡行為によつて滞納処分を免れる結果となることを認識していたこと、すなわち滞納処分を免れるための故意を以て右財産譲渡行為をなしたと主張するが、その主張するところによれば、原告は(旧)国税徴収法第一五条が「滞納者財産の差押を免れるため故意にその財産を譲渡したる場合」と規定するのは、現行国税徴収法第一七八条が準用する民法第四二四条が「その債権者を害することを知つてなしたる法律行為」と規定するのと全然同義であると解するもの考えられるが、かかる解釈は、原告独自の解釈であると考える。けだし、(旧)国税徴収法第一五条は「滞納処分を免れるため」の目的意思を要件とするも、民法第四二四条は「債権者を害することの認識あるを以てたり「害するため」なる目的意思を要件としないからである。
と述べた。
証拠<省略>
理由
一、訴外新大和染料株式会社(以下訴外会社という)が、その昭和三二年度分法人税について、昭和三二年七月二〇日当時既に所轄税務署長により本税額二、二九八、五三〇円、利子税額二九二、二三〇円合計二、五九〇、七六〇円とする更正処分をうけていたが、その後大阪国税局長により本税額一、二九〇、八九〇円、利子税額一六四、〇七〇円合計一、四五四、九六〇円として更正処分一部取消の審査決定をうけたことは当事者間に争がないところ、被告は、訴外会社が前同日当時更正処分について再調査請求について審査請求中であつたから、滞納税額は未決定であつたと主張するが法人税に関する租税債権は当該事業年度の終了によつて成立し更正処分により具体的に確定されるものであつて、更正処分による租税債権の数額がこれに対する再調査乃至審査請求によつて未決定の状態に帰せしめられるものでないこと原告の主張するとおりであるから、訴外会社が昭和三二年七月二〇日現在において同年度分の法人税として本税額一、二九〇、八九〇円、利子税額一六四、〇七〇円合計一、四五四、九六〇円の国税を滞納していたことは明らかである。そして、訴外会社が昭和三二年七月二〇日別紙第二目録記載のとおり会社の総資産を被告に譲渡したことは当事者間に争のない事実である。
二、ところで、原告は、訴外会社が被告に対してなした右財産譲渡行為が(旧)国税徴収法(明治三〇年三月二九日法律第二一号)第一五条にいわゆる詐害行為に該当するとして、同法条に基き、本訴請求に及ぶものであるが、被告は根拠法規を争い、詐害の意思を否認するので、以下この点について検討することとする。
(一) 根拠法規について、
(旧)国税徴収法第一五条の規定は昭和三五年一月一日施行された現行国税徴収法(昭和三四年四月二〇日法律第一四七号)第一七八条が準用する民法第四二四条の規定とその立法趣旨を同一にするものではあるが、前者は滞納者が国税滞納処分の執行にあたり差押を免れるという故意でその財産を譲渡したときに限りこれを取消うるものとしているに反し、後者は単に債務者が一般担保を減少せしめることを認識してなした法律行為の取消を認め、特定の債権者を害する認識を必要としないのであつて、その法律要件を異にするのであるから、旧法は新法の施行にともない当然改廃せられその効力を失つたものであつて、もとより旧法の効力を残存せしめる経過規定も存しないのであるが、現行国税徴収法第一七八条が制定施行せられるに当り法不遡及の原則を明言する経過規定が制定せられていないことから、当然に新法に遡及効を認めた趣旨とは解せられず、また新法に遡及効を認める経過規定も存しないのであるから、法の一般原則に従い、新法不遡及の原則、すなわち新法施行前に生じた事項については旧法を適用するものと解すべきである。いわゆる新法不遡及の原則は旧法時代に成立した事項(法律要件)には旧法の認める効力を附し、これに反し、新法時代に成立した事項についてのみ、新法の認める効力を附することを内容とするものであつて、一定の法律要件を構成する法律事実が旧法時代に発生するときは、その法律事実から構成される法律要件の成立は旧法によつて定めるべきであり、一定の法律要件は既に旧法時代に発生し、ただその発生した権利の効方が新法時代に問題となつたときには、旧法の認める効力が附せられるものであるから、原告が詐害行為であると主張する本件財産譲渡行為が現行国税徴収法が施行せられる以前、すなわち(旧)国税徴収法が施行せられていた間になされた行為である以上、その法律事実から構成される法律要件の成立は(旧)国税徴収法第一五条によつて定めるべきであつて、その効力の発生した権利、すなわち詐害行為取消権が現行国税徴収法が施行せられるに至つた後において行使せられるとても、その権利行使が新法又はその経過規定によつて制限又は禁止されるものでない以上、その既に効力の発生した権利の行使に対して(旧)国税徴収法第一五条の認める効力が附せられることは当然である。ところで現行国税徴収法第一七八条は(旧)国税徴収法第一五条とその立法趣旨を同一にするものであつて、旧法に基いて発生した権利の行使を制限禁止するものでなく、またその旨の経過規定も存しないのであるから、原告の主張する詐害行為取消権は新法施行後といえども行使しうべく、旧法時代に発生した権利の効力叉は旧法の効力を存続せしめる経過規定がないからといつて、その権利行使を妨げる理由とはならないのである。けだし、旧法が新法の施行にともない改廃失効したことと、新法不遡及の原則により新法施行前に生じた事項について旧法が適用されることとは別個の問題であるからである。
従つて、原告がその主張する詐害行為の取消について、その根拠法規を(旧)国税徴収法第一五条に求めたのは正当であつて、これに反する被告の主張は理由がない。
(二) 詐害意思について、
被告は、(旧)国税徴収法第一五条は「滞納処分を免れるため」の目的意思を要件とするものであつて、本件財産譲渡行為当時において被告はもとより訴外会社もかかる目的意思を有していなかつたと主張し、詐害意思を否認するので判断するに、(旧)国税徴収法第一五条は「滞納処分ヲ執行スルニ当リ滞納者財産ノ差押ヲ免ルル為故意ニ其ノ財産ヲ譲渡シタル場合」と規定し、右規定について、「納税者カ滞納処分ノ執行ヲ受ケントスルニ際シ財産ノ差押ヲ免ルルコトヲ目的トシテ故意ニ其財産ヲ譲渡シ譲受人モ其ノ情ヲ知リテ譲受ケタルモノハ総テ其行為ノ取消ヲ求メ得ベキコトヲ規定シタル法意ナリ」とする判例(明治三九年(オ)第九二号、同年四月一八日大審民事二部判決、大審民録一二輯六一七頁)があり、被告の見解に副うもののごとくであるが、一方(旧)国税徴収法第一五条は「債権譲渡カ国税滞納処分ノ執行二当リ差押ヲ免ルルノ故意ヲ以テ為サレ譲受人ニ於テ其情ヲ知リタル」場合に該当するとする判例(大正五年(オ)第一〇八二号、同六年二月七日大審民事第三部判決、大審民録二三輯一二八頁)もあるのであつて、(旧)国税徴収法第一五条の取消権が民法第四二四条の詐害行為取消権とその立法趣旨を同一にするもので、その間になんらの実質的効力の差異を認めるべき理由の存しないところからすると、(旧)国税徴収法第一五条の取消権については、差押を免れるという故意があればたりかかる故意のほか積極的に滞納処分の差押を免れる意欲ないしは目的意思を必要とするものではないと考える。
そこで訴外会社が本件財産譲渡行為をなすについて国税滞納処分の差押を免れるという故意があつたかどうかについて判断すると、訴外会社が設立された経過、本件財産譲渡行為の当事者である訴外会社と被告との関係、本件財産譲渡契約成立の時期、本件財産譲渡契約の内容が被告の主張するとおりであつて、特に本件財産譲渡行為の対象となつたものが訴外会社の総資産であり、本件資産譲渡行為直後訴外会社は事業を休止し、昭和三二年一〇月一九日解散したこと、本件財産譲渡行為当時において訴外会社の代表取締役小椋憲之助、同内海正明が被告の代表取締役をも兼ねていて、訴外会社の昭和三二年度分法人税に関する更正処分の内容を知つていたことは当事者間に争のない事実であるから、右事実によれば、本件財産譲渡行為が訴外会社設立当初より予見されていたものであつても、訴外会社は会社総資産に対する差押を免れるという故意をもつてこれを被告に譲渡したものであり、被告はその情を知つてこれを譲受けたものと認めるのが相当である。
従つて、訴外会社が被告に対してなした本件財産譲渡行為は、滞納処分の執行に当つて財産の差押を免れるため故意に譲渡したものというべく、右譲渡行為は(旧)国税徴収法第一五条の詐害行為にあたると解すべきである。
三、そうすると、本件財産譲渡行為は(旧)国税徴収法第一五条に基き原告の徴収権確保の必要の限度において取消さるべきところ、原告は、本件財産譲渡行為のうち別紙第一目録記載の物件の譲渡について、滞納税額一、四五四、九六〇円の限度で取消を求めるのであるが、詐害行為の取消は、その行為の目的たる物件が可分であるときはその一部を取消すことは許されるのであるから、原告が本件譲渡物件のうち別紙第一目録記載の物件の譲渡について前記滞納税額の限度で取消を求めるのは正当というべく、本件財産譲渡行為のうち別紙第一目録記載の物件の譲渡が前記滞納税額の限度で取消される以上、被告は原告に対して譲渡行為の取消された限度において別紙第一目録記載の物件を返還すべき義務があるところ、別紙第一目録記載の物件はすべて被告において売却処分され、現在占有していないことは被告の認めて争わないところであり、右物件の本件口頭弁論終結当時における時価が前記滞納税額を下らないことが弁論の全趣旨により推認できるから、被告は原告に対し、返還に代わる損害賠償として、取消限度相当の一、四五四、九六〇円を支払うべき義務あるものというべきである。
四、以上のとおりであるから、原告が被告との間において(旧)国税徴収法第一五条に基き本件財産譲渡行為のうち、別紙第一目録記載の物件の譲渡について、その価額中、滞納税額一、四五四、九六〇円の限度でその取消を求めるとともに、同物件の返還不能による損害賠償として金一、四五四、九六〇円の支払を求める請求は正当であるから認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 阪井いく朗)
第一、第二目録<省略>